声に出すことで確かになる「幸せの価値観」 映画「夢売るふたり」

Empty cinema screen with audience. Ready for adding your picture. Screen has crisp borders. This shot was made using tripod with long exposure.
映画ログ

小さな居酒屋を切り盛りしていた阿部サダヲと松たか子。
開店5周年記念の日、祝いの日に一瞬の出来事から火事になり、店は炎上してしまう。

夢も断たれ、生きる希望を失い、自己肯定感ゼロの阿部サダヲと夫のために働き続ける松たか子。
博多出身の九州男児の夫には、幾分かのプライドもあり、周囲から「できる妻」と言われることに対して、本人が一番それをよく分かっていたのかもしれない。

そして新たな夢のために、妻は夫に「女性に夢を与える」という形での資金繰りを提案する。

後半に行くにつれ、饒舌になる夫と、無口になっていく妻。

夫は「夢のために」、妻は「夫のために」、お互い一生懸命に生きていたはずなのに
一体どこでボタンが掛け違ってしまったのだろう。

そしてその違和感は徐々に大きくなっていき、最後には悪い形でそれは結実します。

「夫に浮気をさせる」と言う話自体は結婚詐欺の映画で見ますが、妻の復讐という要素もあるのかも知れません。

作中でも、「しっかり稼いで、2倍にして皆さんに返そうね」という発言や、部屋の中に詐欺を行なった相手からの借用書を飾るなど、自らの行為に対して「責任」の様な、「覚悟」の様なモノを持っていたと感じました。

こういった行動からは、単に悪に傾倒した訳ではない印象を受けます。

なんでここまでこの夫婦のすれ違いは大きくなっていったのでしょうか。

妻の発する言葉

作中を通して、妻の「価値観」に踏み込んだ会話がほとんど見られません。

妻の趣味はなんなのか?妻は夫の何が好きなのか?どこか改善して欲しいところはないのか?
夫のプライドのために、妻が気を使う場面も多くあります。

もしかするとそんなプライドのせいで、夫に本音を言うことができなくなっていたのかも知れません。

ドイツの作家であるヘルマン・ヘッセはこう言いました。

「夫婦とは、お互いを見つめ合う存在ではなく、
ひとつの星を2人で眺めるものである」

夫婦とは、家族とは、運命共同体です。

構造としての夫婦

家族を「構造」として分析した場合、「境界」「サブシステム」「パワー」という着眼点があります。

これは「家族構造理論」とも呼ばれ、この着眼点で夫婦を見ると、また違った様相が見えてきます。

家族の「境界」

家族には、ふたつの「境界」が存在します。

ひとつはで「内外の境界」、もうひとつは「世代間の境界」です。

「内外の境界」の問題、は別名「自立性の問題」とも呼ばれます。

夫婦とは、一つの家族から自立した人間が、新たなコミュニティを作り生まれるものです。
その過程では、当然価値観の相違・対立や、すり合わせを経験します。

重要なことは、「二人でやり取りして落とし所を決めること」です。

そうすることで、新しい家族はそれぞれの出身家族とは別の小集団になる、と言われます。

 

同じ家族であっても、親世代との間には境界が存在します。
それが「世代間の境界」です。

親と子供、親の親、その間には同じ家族でも境界が存在します。

世代間にどのような境界が引かれているか。その境界がどのように作用しているのか着目することも重要です。

相続から見える親子の関係であったり、三角関係、母子密着などがわかり易い例として挙げられています。

「サブシステム」

「夫婦サブシステム」「両親サブシステム」「同胞サブシステム」など、関係性や役割で担われる部分が多いです。

 

家族間の「パワー」

家族構造に影響を与える「パワー」とは4つ存在すると言われます。

「決定」「コントロール力(権威)」「お金」「暴力」の4つです。

 

「映画で学ぶ家族のカタチ」

こういった視点で映画を見るとまた違った味があります。

今後は「映画で学ぶ家族のカタチ」としてアウトプットできていければと思います。

こういった学び方は「シネメデュケーション」と言われており、

家族システム理論を学ぶ上で、重要な能力は「妄想力」と言われています。

 

どこに向かうか、その共通基盤の大切さ、
どうやってお互いの本音や価値観を知り合うか、やはりそこが重要なのだと感じました。

 

 

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